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山の「けもの」を獲ってたべる。

目次

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大田原地区在住のヨコヤマです。

5月に入り、山里は新緑の季節をむかえています。水を張った田んぼから見上げれば、はるか彼方には雪を頂いた北アルプスの姿。家の裏では八重桜がぽってりとした桃色に咲き、連休にはわが家の恒例行事のお花見をしました。

 

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山に入って、たらの芽、こごみ、こしあぶらなどの山菜も採ってきました。束の間の時期ですが、ほんとうにいい季節になったねと、近しい人たちと顔を見合わせるこの頃です。

 

さて今回は、山の「けもの」を獲ってたべることについて書きます。

いきおい血なまぐさい言葉は避けられそうにありません。苦手な方は、このさきご遠慮ください。

 

 

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ある初夏の日、仕事に向かおうとして、山道の傍に設置していた「くくりわな」に角のない鹿がかかっているのを見つけました。わなによる捕獲では、いつ「けもの」が獲れるかわかりません。こうして思いがけないタイミングで獲物がかかります。

 

取り急ぎ鹿の動きを止め、頸動脈を切って血を抜きます。報告のために性別や固体の状態を調べ、からだの大きさ・重さをはかり、写真を撮るなどの記録を済ませます。

 

そののち解体場所に移動させ、時間の許す限りのやり方で解体します。鞣(なめ)すために皮をはぎ、食べられる部位を肉にしていきます。今日もほかの予定との兼ね合いであまり時間がとれず、比較的さばきやすい背ロースともも肉をとりわけ、舌を切り出したところまでになりました。

 

残渣(ざんさ)の処理をして、ひとまずの処置は終了です。

 

 

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まさかわたしがこうして山の「けもの」を獲るようになるとは、ここに住みはじめるまでは考えてもみませんでした。

 

この大田原地区も、全国の例にもれず山林の荒廃がすすんでいます。人の手の入らなくなった里山には鹿や猪などの「けもの」があらわれるようになり、やがて地区内にも進出して農作物や山林を荒らすようになりました。昨今の気候変動や環境変化も重なり、生態や繁殖についても以前とは違っているようです。

 

一方で、猟を担ってきた猟師の方はだんだんに歳をかさね、後継者は十分ではありません。里山の現場で「けもの」の増え方と人間の暮らしはバランスを崩していると感じます。わたしの耕作している田んぼやりんご畑でも、「けもの」による被害が年々顕著になっています。

 

そんななか、地区の方から勧められて狩猟の免許を取り、わなで猟をはじめて数年がたちます。千曲市の有害鳥獣捕獲員にも任命されて、年間を通して鹿などの「けもの」を獲るようになりました。

 

わなのかけかた、獲物のさばきかたなどは何も知らないところからのスタートでしたが、猟友会の先輩方に教わりながら、少しずつ手際がよくなってきたようにおもいます。

 

 

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大まかにさばいた肉を整えていくのは、その日の夜なべ仕事。ブロックに分けて、ていねいに筋をとって、肉を包んでいる膜やぬめりをとり除いていきます。やがて、つややかにひきしまった赤身の肉が、キロ単位でできあがりました。

 

ここに住む以前は、「お肉」といえばお店でパック詰めされたものに接することがほとんどでした。その動物がどこかで生きていたこと、誰かが解体したことについては、想像をどこかとおくに置いて安心していたようにおもいます。

 

今日のように、自分の手で体温のある生き物の命をうばうのは、いつもそれまでの経験を絶する感触です。解体するときの音やにおい、肢体の重みは、言葉にあらわせない異質なものとして立ちあらわれます。

 

そんな中で、たくさんのことを考えます。

 

この世界で「野蛮」や「残酷」の意味するものについて。あるいは狩猟採取や屠畜をこととする人たちを、歴史の中で差別をうける立場に置いてきた社会のこと。

 

一方で現在、「肉食」が環境や社会への負荷になっているという切実な問いかけについて。

この地で営む暮らしには、いつもずっしりと手ごたえがあって、そうした答えの出ないあれこれを思い考えるきっかけになっていると感じます。

 

ところでうちに帰れば、たくさんの肉が手に入ったことはうれしい報せ。子どもたちからも歓声が上がります。どっしりした味わいの肉は慣れるほどおいしく、食べるよろこびが腹の底までとどくようです。

 

カツレツ、からあげ、ロースト、餃子、炒め物など、きょうも山の「けもの」が食卓にのぼるわが家です。

 

 

この記事を書いた人:ヨコヤマタケオ

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