春のあれこれ
目次
1.
大田原地区在住のヨコヤマです。
今年は立春をすぎてからの冷えこみがつよく、時ならぬ重い雪もいく度か降りました。そうやって行きつ戻りつしていた季節もしだいに進み、いよいよ春の本番を迎えています。
この季節を我が家でいちばん喜んでいるのは、冬のあいだ小屋の中でじっと過ごしていた山羊たちかもしれません。朝、小屋の扉をあけると同時に、緑の野に一目散に飛び出していく3頭を追いながら、わたしも浮き立つこころをおさえられずにいます。
秋をいちばんに感じるのが透きとおる風の涼しさだとすれば、春を届けてくれるのは野に満ちるやわらかい陽射しでしょうか。大田原のような山里に訪れる春のすがたについては、ふるくから詩歌にうたわれ散文につづられてきたとおり。日いちにちとほどける根雪の下からのぞくふきのとうのもえぎ色。畑の小麦の若草色。ふと見ると、台所の野沢菜漬けの桶にもうっすら白い膜が張っています。
標高のたかい大田原地区ですが、山桜や辛夷の花が山はだを淡く彩る日々ももうすぐです。
2.
いっぽう、暖かさを増すこの季節には、農業と暮らしの仕事が急にかたまりとなって押しよせてくるようにも感じられます。足元を見ればりんご畑の片付けも薪づくりも、冬の間に済ませられず積みのこしたまま。田んぼやりんご畑は、今年の収穫に向けた準備の時期を迎えています。木の芽時にゆらぐ体調と相まって、春先は気ぜわしさに追い立てられる季節でもあります。
そんな春の仕事ですが、子どもたちにとってはお小遣いかせぎのよい機会にもなっているようで。
しいたけ種菌の駒うち、りんごの剪定枝のかたづけ、稲のすじ(種)播き、苗床の水まきなど、下の子どもたちも少しずつお手伝いができるようになってきました。親としても子どもの成長を感じると同時に、一緒にやる仕事はなんだか新鮮な気持ちがしています。
5年生の長男は家の裏に萌えだしたよもぎを摘んできました。大豆を炒ってきな粉をつくり、いただき物の小豆であんこを炊いて、妻と子どもが搗いてくれた草もち。なんだか涙の出そうな春の香りでした。
3.
3月の末には、ことしもお味噌を仕込みました。
2斗のお米を蒸かして麹をつくり、同じく2斗の大豆を大釜で煮てつぶし、塩とあわせます。
お友達家族、ご近所の方もおさそいして、にぎやかにお味噌を捏ねました。亡くなった祖母につくり方をおそわったときのように、作業のあとには集まったみんなでお茶をして、持ちよったお料理をたべ、春をよろこぶお祭りみたいな一日になりました。
4.
話は逸れますが、4月の初めに能登の災害ボランティアに参加してきました。震災からは1年以上、豪雨災害からも半年以上が経過しています。それでも建物や水道、道路などの傷みも残っていて、手仕事での支援が必要な部分もまだまだあると感じました。
地元の方からは、地域で営まれてきた暮らしのことをお聞きする機会もあり、景色を見渡せば、春を迎える野山を背景に、田んぼでお米づくりの準備が着々と進められています。ここでも同じように、ふるくから土地に根付いたくらしが営まれていること。この先もできる支援を継続していきたいと思いました。
ボランティアの方は言葉どおり日本じゅうから参加されていて、たくさんの話を交わしました。さまざまな方の生き方に触れ、わたし自身も精いっぱい生きたいなと思う経験になりました。
あと、海のない長野から行くと、海産物がほんとうにおいしい。甘えび最高でした!