大田原地区の先輩移住者に会いに行く 〜後編〜
目次
1.
大田原地区在住のヨコヤマです。
大田原から山道を下った稲荷山の街に、一軒の書店があります。
今では珍しくなってしまった昔ながらの小さなお店。
先日注文していた本が入荷したとのことで、いそいそと買いに行ってきました。

年に何冊か、やはり実物を手に取りたくなる本があります。
インターネットで購入するのはとっても簡単なのですが、こうして実際の書店まで足を運び、書籍を手にすると、よりいっそう贅沢な気持ちになるのでした。
2.

さて、前回の記事に書いた話のあとも、先輩移住者のようこさん・あきらさんご夫妻とのおしゃべりは続きます。

ようこ:「大田原は今、子ども何人?」
ヨコヤマ:うちが5人と、〇〇さんちが3人。あとはいないですね。僕としては、この地域は子育てをするにもいいんじゃないかと感じてるんですが。
あきら:「若いご家族でも今、都市部で新しく家を建てるというのは、なかなか難しいよね」
ヨコヤマ:そういうときに、こういう地域での暮らしも選択肢になればいいなって思うんですよね。
ようこ:「都会でやりたいことがある人も、条件が整ってればいいけどね」
ヨコヤマ:今は、仕事もリモートがありますしね。
ようこ:「でも、私はよくわからないんだけど、リモートって、どんな仕事をしているのかな」
ヨコヤマ:僕も正直よくわかりません(笑)
あきら:「きっと、リモートで成り立つ仕事とそうでない仕事があるんだろうね」

ようこ:「今日ね、たまたま町で政治家のポスターを見て、いろいろ考えてたんだけど。
以前、大田原のTさんが、自分の生まれ育った地域のことを、「良いムラだなと思った」って言っていたのが、すごく印象に残っててね。
ふるさとを離れた人が言うのではなくて、生え抜きの人が自分の地域を「いいムラだな」って思えることに、なにか感動したんだよね。
それで、地元の人がフジバカマを植えたり、地域を良くしようって活動したりすることは、政治家の人が言ってることよりも、ずっと大事だなって思ったよね」
ヨコヤマ:ふんふん。
ようこ:「それで私はきょうあきらさんに政治のことであたっちゃったんだけど(笑)」
ヨコヤマ:政治のことで言えば、あっちの国もこっちの国も、ちょっと信じられないような状況ですよね。
ようこ:「ほんとうに。どんな国でも、暴力でなんとかしようというのは…」
ヨコヤマ:それで、この国はこの国だし。
ようこ「ほんとうにね」
ヨコヤマ:理解の範疇をこえてます…
ようこ:「“熟議” なんていう言葉が、死語のようになっていて。
だから、Tさんたちが地元で自分の地域のためにがんばっていることが、一番信頼できるよ」
ヨコヤマ:僕たちはTさんの亡くなったおばあちゃんに、とってもお世話になって。いつもいろいろいただいて。
ようこ:「おばあちゃんも、ヨコヤマさんのりんご、おいしいって言ってたよ」

あきら:「ヨコヤマさんからすると、どう思う?この地域は」
ヨコヤマ:もうここに住んでることが、僕自身を形づくっている感じですよね。もしも違う場所に住んでたら、今の僕は僕じゃないというか。
ようこ:「でも私は、この歳になって、なんでこんな寒いところにって思うよ(笑)」
ヨコヤマ:僕の妻もそう言ってます(笑)。
あきら:「私はここに来て、人生観が変わりました。ほんとうに。
都会には社会がなかったけれど、ここには社会があると思ったんだよ。『これが人間の社会なんだ』ということをここでつくづく知りました。
縄文のむかしから、こうやって地域で社会というものを育んできたんだと感じたよね」
ヨコヤマ:みなさんお互いのことをよく知ってますしね。
ようこ:「でも私が、ここの地域の会合に初めて出て行ってたら、男の人ばっかりでしょう。
そこで私がたくさんしゃべったから。しばらく噂になったみたい」
ヨコヤマ:ははー(笑)
ようこ「座る席もね、男と女で決まっていたり」
ヨコヤマ:上座と下座とか。
あきら:「あなたはそこじゃないよ、って言われたりね」
ようこ:「わたしはそういうのに、へへ~、と思ったりして。
でもそのあと、短歌の会に誘われたら、そこでは女性の先生が中心になっていて、ああ、やっとこういうところがあったと思って、それはうれしかった。
今では男社会も、まあそういうもんかなと思うようになったけどね」
ヨコヤマ:僕からするとすごく意外というか。
「かたくり」にはおじいちゃんおばあちゃんがたくさん集まってお茶してお喋りしてたから、ようこさんはここのコミュニティの中心人物だと思ってました。
ようこ:「あ、ある意味でそれはあったかもしれないけどね。
外から来た私はしがらみがなかったから、みんな何でも話しやすかったのかも」
ヨコヤマ:僕もそのおかげでいろんな方と知り合えましたしね。
ようこ:「市場での仕入れとかさすがに大変で、閉めることになっちゃったけど、協力してくれる人がたくさんいて、地域に生かされていると思った。しかし、朝の仕入れは寒かったなあ」
ヨコヤマ:昔からすると、寒さもだいぶ楽になりましたけどね。一方で温暖化はやっぱり深刻ですが。
ようこ:「雪は少なくなっちゃったね。異常気象だよね」
ヨコヤマ:今年なんか沢の水が少くて、どこの田んぼでも水が足りなくて。
あきら:「住みはじめた頃は、1月から3月までは常時60センチくらいは積もってたよね」
ヨコヤマ:今はもう、根雪ってものがありません。
ようこ:「温暖化で地球が大変なのに、戦争なんかやってる場合じゃないのにね…」
ヨコヤマ:ほんとにそうですよ!
あきら:「だけど、温暖化で暮らしが追い詰められると、また戦争をしようとする人が出てくるでしょう」
ヨコヤマ:食料とかが不足したときに、またそこで暴力が手段として現われてきちゃいますよね。
ようこ:「まったく、軍事なんかにお金使うのは、理解できないよ。人間は愚かだ」
ヨコヤマ:子どもたちに、どんな世の中を残せるのかと思うと…。
一同「はぁ…(溜息)」
ヨコヤマ:大田原はまだのんきな暮らしですが。
あきら:「いちばん問題になるのは食料だよね」
ヨコヤマ:今の農業は原油とか化学製品がないと、なにもできないですしね。

あきら:「結局、やがては自分たちの地域が自律してやっていくことが重要になると思う」
ようこ:「大田原はまだ地域にそういう意識があるよね」
あきら:「 『社会がしっかりしている』っていうのはそういうことだと思うよ。みんな、じぶんの地域だと思ってる。人間関係もちゃんとある。都会じゃなかなかそうはいかないよ」
ようこ:「ヨコヤマさんもがんばらなきゃ」
ヨコヤマ:いや、僕なんかはまだまだ…。
ようこ:「ある意味ゆるくやっていければね」
移住前には首都圏で教育や自然科学の研究に携わり、世の中のあれこれに広く知見のあるご夫妻。
飾らない人柄と、やさしい香りのお茶に促されて、おしゃべりはとめどなく続くのでした。
日々畑を耕し、木を伐りだし、歌を詠む。そんなおふたりの地域に根ざした暮らしぶりを道しるべにして、私たち家族も暮らしをたててきたように思います。
あきら:「大田原は、人がいればちゃんと未来がある地域だと思うよ」
ようこ:「昔使ってた井戸やなんかをまた使えるようにするのとかも大事だよね」
あきら:「私は農地とか山林とかを地域で有効に使い、エネルギーや雇用の面でも自律した社会をつくるっていうのを夢見てるんだけどね。地域にはそれだけの資源があると思うよ」
この記事を書いた人:移住者ライター ヨコヤマタケオ
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