冬に向かって
目次
1.
大田原地区在住のヨコヤマです。
山里は秋も深まり、いよいよ寒さに身が縮む季節になっています。
朝、重い身体で布団からはい出してみれば、辺りは一面に白く霜が降りていました。
家の回りの草むらでは、枯れ残った葉が朝日を受けてきらきらと光り、薄い玻璃のような氷が陽に溶ける、あわい一瞬の光を見せています。
朝晩の冷え込みをひしひしと感じるこの時期は、昼間の陽のあたたかさがなにより貴重です。
暑かった夏にくらべて、太陽が低く軌道を描く晩秋。
山に囲まれたわが家の庭先では、遅い日の出と早い日の入りのわずかな時間を惜しむように、穀物や果物を干しては取り込む日々が続きます。
稲づくりを休んだ田んぼでは蕎麦の実を収穫しましたが、鹿に大半を食べられてしまい、それでも子どもと一緒に手作業で脱穀し、しばらく食べる分はなんとか確保できました。
大豆をはじめとする豆類は、春に蒔き遅れたせいでわずかの収穫でした。
知人にいただいた渋柿は、夜なべで皮をむいて二階の窓に吊るしています。

それから今年は、子どもが蒸かしたさつまいもで干し芋をつくり、二番なりのぶどうをいただいてきて、オーブンで干しぶどうをつくったり。
雪に覆われる季節を迎える前の保存作業は手間もかかりますが、干しあがった食べ物には収穫したてとはまた違う旨みがぎゅっと閉じこめられています。
口にふくめばほどける味わいの中に、秋の陽の香ばしさとふくよかさが確かに残っています。
来月には、毎年恒例の野沢菜漬けやキムチづくりが始まります。それもまた、冬支度の楽しみのひとつです。
2.

朝晩の寒さをうけて、畑ではりんごの色づきも進んできました。
収穫期を迎えている「サンふじ」は、わが家の農園の主力商品。
今年は5月の降雹や真夏の暑さにも耐え、ここ数年でも特に良い出来になりました。
収穫、発送と忙しい日々ですが、妻の友達が手伝いに来てくれるおかげで、わいわい賑やかに仕事をしています。
傷物のりんごは食べきれないほどで、毎日山のように持って帰っては、子どもたちのおやつになっています。それはもう食べ放題。

それから、来年の冬に向けて、少しずつストーブ用の薪づくりも始めました。山でもらってきた丸太を細かくして積み、ひと夏以上かけてじっくり乾かします。
目の前の仕事に駆け回っているうちに、追い立てられるように夕暮れは早くなって、気がつけばもう夕方。
晩秋の陽は郷愁をさそう間もなく暮れるので、子どもを保育園に迎えに行ってたどる家路はもう宵闇に包まれています。
山道で軽トラックのライトが照らすのは、乾いた風にざわめく木々。枯れ草。広葉樹や落葉松の落葉も進んで、路肩にはうず高く落ち葉が積もっています。
ガードレールの反射鏡が煌めき、山の暗がりではときおり鹿や狸の目が光ります。
そんな道を抜けてようやく見えてくるわが家の灯り。これから始まる夕べの団らんに思いをはせて、ひときわ暖かく感じられるのでした。
この記事を書いた人:移住者ライター ヨコヤマタケオ
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